実家を兄弟で相続したら 共有名義と持ち続けるコストを考える
親の家を兄弟姉妹で共有名義のまま相続したとき、共有のルールと固定資産税などの年間コストを計算例で確認します。

写真: _steffen / CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons、縮小・トリミングして使用。ライセンス)
親の家を兄弟姉妹で相続すると、多くの場合、遺産分割が終わるまでその不動産は相続人全員の「共有」になります。誰か一人が「売りたい」と思っても、ほかの相続人の同意がなければ売却できません。鹿児島市・姶良市で実家を相続し、まだ結論を出していない人に向けて、共有名義のまま置いておくリスクと、持ち続けるとかかるお金を整理します。
共有名義になると何ができて、何ができないか
亡くなった人の財産は、遺産分割協議が成立するまで相続人全員の共有財産として扱われます。民法では、共有不動産に対する行為を次の3段階に分けています。
- 保存行為(修繕や不法占拠者への対応など)は共有者が単独でできます。
- 管理行為(短期の賃貸借など、建物や土地の形や使い方を大きく変えない行為)は共有者の持分の過半数で決められます。
- 変更・処分行為(売却、建物の取り壊し、大規模リフォームなど)には共有者全員の同意が必要です。
令和5年(2023年)4月1日に施行された民法改正で、共有者の一部が不明でも裁判所の決定で管理や一部の変更を進められる制度が整いましたが、通常の売却には依然として全員の同意が欠かせません。きょうだいのうち一人でも反対すれば、実家は売ることも大きく手を入れることもできないまま残ります。
先送りするほど共有者が増える「数次相続」
共有名義のまま年月が経つと、共有者の一人が亡くなり、その人の相続人(子や配偶者)が新たに共有者として加わります。これが繰り返されると、当初は兄弟3人の共有だったものが、次の世代では甥や姪、その配偶者まで含めた多数の共有になり得ます。関係が遠くなるほど連絡や話し合いが難しくなり、結論を出すコストはさらに上がります。
国土交通省の調査によると、所有者がすぐに分からない、または分かっても連絡が取れない「所有者不明土地」は国土の約22%を占め、面積は九州全土を上回ります。その発生原因の約3分の2は相続登記が済んでいないことによるものとされています。相続登記の義務化(2024年4月1日施行、相続を知った日から3年以内に登記、正当な理由がない場合は10万円以下の過料)は、こうした共有者の増加と所有者不明化を防ぐために導入された制度です。2024年4月1日より前に発生した相続についても、2027年3月31日までに登記する必要があります。
持ち続けると毎年いくらかかるか(計算例)
結論を先送りにしても、固定資産税と都市計画税は毎年かかります。鹿児島市と姶良市では都市計画税の税率が異なるため、同じ条件でも年間の負担額は変わります。
この表は評価額を仮に置いた計算例です。実際の評価額は毎年送られてくる固定資産税の課税明細書で確認できます。ここに火災保険料や最低限の除草・清掃費が加わります。さらに、庭の手入れや建物の破損を放置して「管理不全空家」の勧告を受けると、土地にかかる住宅用地特例が外れ、固定資産税等は最大6倍程度に跳ね上がります。鹿児島市・姶良市とも共通の仕組みで、勧告の有無は現地の見回りで判断されます。
判断に時間がかかるほど、この年間コストが積み重なります。5年話し合いが長引けば、計算例の数字だけで5倍、火災保険や修繕費を含めればさらに大きな金額になります。
遺産分割の方法を比べる
共有のまま置いておく以外に、遺産分割には主に3つの方法があります。
- 現物分割:不動産そのものを特定の相続人が単独で取得する方法です。他の相続人への配慮が別途必要になります。
- 代償分割:一人が不動産を取得し、ほかの相続人には相応の金銭(代償金)を渡す方法です。取得する人にまとまった資金が必要です。
- 換価分割:不動産を売却して、その代金を相続人で分ける方法です。全員の同意で進められ、現金で分けられるため公平感を出しやすい一方、売却には時間がかかります。
どの方法を選ぶかは、実家に住みたい人がいるか、資金に余裕がある相続人がいるか、きょうだい間の関係によって変わります。編集部は、結論を急ぐ前に、まず全員で固定資産税の通知書と実家の現状を共有することが、話し合いを進めやすくすると見ています。
県外に住む相続人がいる場合の管理
きょうだいの一人が県外に住んでいて、実家の見回りや管理ができないケースは珍しくありません。鹿児島市シルバー人材センターや管理会社では、空き家の巡回・見回りサービスを提供しています。料金はサービス内容によって異なるため、依頼前に直接確認が必要です。
姶良市では、空き家を売却・賃貸したい人と利用したい人を結ぶ「空き家バンク」制度があり、市と協定を結んだ鹿児島県宅地建物取引業協会・全日本不動産協会鹿児島県本部が仲介にあたります。将来的に貸す・売るという選択肢を考えている場合、登録条件を確認しておく価値があります。姶良市には危険な空き家の解体撤去にかかる費用の一部を補助する制度もあります。
次にやること
- 固定資産税の課税明細書を確認し、実家の評価額と、特例が適用されているかを確認します。
- きょうだい全員で、相続登記がまだ済んでいるかどうかを確認します。済んでいない場合は、法務局(鹿児島地方法務局は事前予約制の登記手続案内があります)に相談できます。
- 実家の現状(傷み具合、庭の状態)を写真などで共有し、管理不全空家に該当しそうな部分がないか確認します。
- 現物分割・代償分割・換価分割のうち、どの方法がきょうだいの状況に合うかを話し合います。結論が出ない場合は、司法書士や弁護士、税理士に相談する場面です。
- 県外に住む相続人がいる場合は、管理を誰がどう担うか、費用を誰が負担するかを先に決めておきます。
出典・参考資料
本サイトは不動産の売買・仲介を行うものではありません。掲載情報は執筆時点のもので、取引の判断はご自身の責任で行ってください。
